夏樹と空の恋物語
「どこまでも邪魔しやがって! 死んだ人間が、今更なんだ! 」
ギューッと雅の首を絞めてゆく力也。
「俺の邪魔は誰にもさせない! お前を殺せば、誰もこのことを知る者はいなくなるんだ」
苦しむ雅の顔を見て、力也は狂ったように笑い出した。
「何をしている! 」
声がしてハッとなり力也が振り向くと、そこには複数の警察官がいた。
警察官の姿に驚き手が緩んだ力也。
急に空気が入ってきて、雅はむせこんだ。
「大丈夫か? 」
1人の警察官が雅に駆け寄ってきた。
「大丈夫です。…証拠は、ばっちり取りました」
服装を整えながら、ICレコーダーとディスクを警察官に渡した雅。
その様子を見ていた力也は、悔しそうに雅を睨みつけた。
「お前…初めから俺をハメたのか? 」
「そうよ。本当に、雅が生き返ったと思った? 」
「なんだと? 」
フン! と鼻で笑う雅。
警察官は力也を連れて行った…。
雅はフッとため息をついた。
そして空を見上げた。
「…姉さん。ごめんね、13年も待たせて。…仇はとったわ」
空を見上げて雅はニコっと笑った。
その後。
警察に連れて行かれた力也は。
雅にそそのかされたと主張していた。
だが…。
男性警察官に取り調べを受けている力也の元へ、一人の女性刑事がやって来た。
「お前…何故ここに? 」
女性刑事は雅。
かっちりしたスーツに身を包んだ雅は、力也と会った時とは違った雰囲気で、とても生真面目に見える。
「悪いわね。貴方を騙して、おとり捜査をしていたの」
「はぁ? 」
「私は雅の双子の妹。末森 雛(すえもり・ひな)、金奈警察署の刑事よ」
「刑事? 」
「そう。雅とは双子でも、私は生まれたときに養女に出されて、雅とは別々に暮らしていたから、私の存在は知らなかったようね。ずっと、13年間。姉の無念を晴らしたくて、あの事件を再調査していたの。雅は、貴女が横領してたことを知っていたようで。数多くの証拠を握っていたようね。…それで、邪魔になって殺人犯に仕立て上げたのね? 」
雛は一枚の写真を机の上に置いた。
その写真は力也が若い女子と一緒にホテルに入ってゆく写真だった。