夏樹と空の恋物語
「この女性は、宗田ホールディングの経理部にいた女子社員。貴方の不倫相手だった人ね。この女性も、貴女が横領していることを知った事で、自殺に見せかけて殺されたの。交通事故と処理されたけど、本当は…貴方が後ろから押して、車の前に突き出したことが原因だった…」
雛はもう一枚の写真を見せた。
そこには力也が女子社員の背中を押した姿が映っている。
「これはね、目撃者がたまたま写した写真だった。この写真の提出があったのは、雅が自殺した後だったわ。他にも、貴女が他の女子社員に手を出していた証拠が沢山送られてきているわ。秘密にしていたメールもね」
返す言葉がなく、力也は力なく肩をとした。
「やったことは、自分に返るの。13年もかかったけど、貴方の奥様もちゃんと協力してくれたわ。結果として、貴方が殺してしまったけどね」
「…金だ…世の中はみんな金なんだ。…喜美江のと結婚も、金のためだった…金さえあればだれでもいうことを聞く。特に女はみーんな着いてくるんだ! それを…横領が分かったとたん、態度を変えやがる! さんざんいい思いしてきても、警察に言うだの言って脅してくる…。そんな女を殺すしか、俺の生きる道はなかった…」
雛は呆れたようにため息をついた。
「それで、自分の子供まで殺すように奥様に命じるなんてねぇ」
「…あれは、俺の子供じゃない。喜美江が浮気して、ほかの男との間に作った子供だ」
「それで、殺してしまったって事? 」
「もともと俺は、子供は堕ろすように言った。だが喜美江が、どうしても産みたいと言ったんだ。喜美江に似ている顔立ちだったが、その向こうに他の男の影を見て腸が煮えくり返っていた! 他の男の子供を、なんで俺が養わなくてはならないのかってな! 喜美江が殺してくれて、清々していたよ! 」
「その罪を、雅に被せたわけね」
「ああ、紅茶に睡眠を入れて眠らせて。ナイフを握らせたんだ。雅には、横領の秘密を握られていたからな」
「勝手な人…。自分の悪事を隠すために、子供まで殺して人に罪を被せるなんて…」
「勝手なのは、みんな同じだ。俺は…金しか信用できなかったんだ」