夏樹と空の恋物語

 お昼になり。

 空は1人でカフェテリアでお弁当を食べていた。


「藤野山さん、ちょっといいかしら? 」


 お弁当を食べている空の前に、崎山と数名の女子社員がやって来た。

「何でしょうか? 」

 驚いた目で尋ねる空に、崎山は見下した目で空を見た。


「ねぇ藤野山さん。私の勘違いだとは思うんだけど。もしかして、副社長と付き合ってなんていないわよね? 」


 え? 

 驚いて、茫然とした目で見ている空をみて、崎山はクスッと笑った。

「やっぱり違うわよね? 藤野山さんみたいな暗い人と、副社長が付き合うわけがないものね」

 一緒にいた女子社員もクスクスと笑い出した。

「ごめんなさいね、ちょっと気になってしまって。私、社長公認で副社長とは付き合っているものだから。違うって思ったけど、聞いてみたの」


 社長公認?
 どうゆう事?

(空…愛しているよ…)

 夏樹はとても優しい声で言ってくれた。

(僕と一緒に楽しもう)

 そう言ってくれた。

(ずっとね、藤野山さんが入社してきた時から気になっていて…)

 そう言ってくれた夏樹はとても真剣だった。

 でも…社長公認で交際しているのに…

(僕が誰かと付き合っているって思っているよね? 僕はこの5年間、誰とも付き合っていないよ。心が動かされる人がいなかったから)


 あの夏樹の言葉は…嘘だったのだろうか? 


 空は頭が混乱して、帰す言葉が見つからなかった。


「ごめんなさいね、お昼の邪魔しちゃって。誤解だって分かって、安心したわ」

 嫌味のような満面の笑みを浮かべて、崎山は去って行った。


 空はしばらく何も考えられず黙ったまま俯いていた。 

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