夏樹と空の恋物語
雛をリビングに通して、空はお茶を入れた。
「どうぞ…」
「突然、ごめんなさいね。やっと、雅の事件が解決したから。空ちゃんに会いに来たの」
「私の事、知っていたんですか? 」
「ええ、雅とはずっと連絡とりあって仲良くしていたの。でも、私は生まれてすぐに養女に行ったから、公にはしていなかったの。でもね、空ちゃんが赤ちゃんの頃はよく会っていたのよ。とても可愛くて、いつもとっても癒されていたの。その頃、私まだ結婚していても子供がいなかったから。今はね、ちゃんと子供にも恵まれて幸せを手に入れたから大丈夫なんだけどね。雅の無念を晴らすまでは、本当に心から幸せを感じることができなかったわ」
空はゆっくりと雛を見た。
雅とそっくりな雛。
違うのは性格だけ。
雅は控えめな性格だったが、雛ははっきりした積極的な性格のようだ。
「本当はね、雅が逮捕されたとき。空ちゃんを引き取ろうと思ったの。でも、私は警察官だったから身内に犯罪者がいてはいけなくてね。引き取ることが出来なかったの。できることは、空ちゃんがいた施設に支援することしかできなくて。…ごめんね、13年もかかってしまって」
「いえ、母もきっと喜んでいますから。やっと汚名が晴れたと…」
「そうね。後は、空ちゃんが幸せになってくれる事だけね」
「…幸せに…なれるのでしょか? 私…」
ふと、涙ぐんだ目をする空を見て、雛はそっと抱きしめた。
「空ちゃん。幸せになっていいのよ、貴女は何も悪くない。誰が何を言って、素敵な女性よ」
「…こんな暗い私の事…そんなふうに言ってくれるのですか? 」
「空ちゃんが暗かったのは、今まで我慢していたからでしょう? これからは、もう我慢しなくていいの。思い切り楽しめばいいのよ」
「…楽しんで…幸せに…なりたい…。でも…私、弱いから…」
よしよしと、雛は空の頭を撫でた。
「弱くたっていいの。心を強く持てば、それでいいのよ」
「心を強く? 」
「そう。どんな自分でも、受け止めて認めてあげればいいの。人はね、強そうで弱いものよ。大切なのは、貴女の心を強く持つ事。誰がないを言っても、決して自分に嘘をつかないことよ」
自分に嘘をつかない…。
それは…自分の気持ちに嘘をついていはいけないって事だろうか?
「じゃあ…好きな人の事…好きなままでいいのでしょうか? 」
「当り前じゃない。人を好きになるのに、制限はないわ。心から好きな人のことは、好きなままでいいのよ」
「好きなままで…いいんだ…」
「誰が何を言っても、負けることはないの。空ちゃんは、空ちゃんの魅力があって素敵なの。ちゃんと、自分の事を好きになってあげて」
雅に言われて、空はなんとなく気持ちが楽になった。