夏樹と空の恋物語

 崎山に言われたことはショックだった。
 でも、夏樹は「愛している」と言ってくれた。
 夏樹の言葉に嘘はない…嘘をつく人を、好きになってなんかいない…。

 そう…私が変わらなくちゃ、夏樹に相応しい女性になれない。
 誰かに何かを言われても夏樹への気持ちは変わらない。


 好きな気持ち…そのままでいよう…。

 空はそう思った。

「有難うございます雛さん。…ちょっと勇気が出ました」

「空ちゃん、私の事、母親だと思ってくれていいわよ」

「え? 」

「雅の代わりにはならないけど。困ったときは、いつでも相談に乗るわ。悪い奴がいたら、いつでも言って。私が逮捕してあげるから」


 雛の言葉が嬉しくて、空はそっと笑った。



 その後、空と雛は他愛ない話をしていた。

 雛は雅とは真逆で、ハキハキした活発的な女性。

 正義感が強くてまっすぐな人。

 裏がなくて正直なところは、雅と同じだ。



 雛と話していて、空はちょっと落ち着いた。





 夜1人になって。


 そらは南側の窓から、夏樹の住んでいるマンションを見てみた。


 時刻は21時を過ぎているが、まだ夏樹の部屋には灯りがついていない。

 忙しそうだったから、残業しているのかもしれない。

 そんな中、あんな別れのメールを送ってしまって…申し訳なかったかな…。



 カーテンを閉めて、空は寝室へ向かった。

 ベッドに横になると、夏樹と繋がった日の事を思いだした。

 心も体もとても喜びを感じた日。


 翌日には朝ご飯まで作ってくれた夏樹。

 初めて食べた朝ご飯に、空はとても感動していた。


 宗田ホールディングという大きな会社の副社長。

 そんな人と付き合えるなんて…。

 ライバルがいても当然なのに…。

 もう、過去は引きずらなくていいのかもしれない…。


 空はそう思った。

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