夏樹と空の恋物語

 お昼に見かけて、傍に行って一緒にご飯を食べようとすると、空は逃げてしまう。

 休憩時間にカフェテリアで見かけて、話しかけてもすぐにどこかに行ってしまう空。


 どこか悲しそうな目をしていて、何かを思い詰めているのを夏樹は感じていた。


 

 空が入社してきて1ヵ月経過した頃。


 仕事の合間に、空が自販機で飲み物を買おうとした時。
 

 それを見かけた夏樹が声をかけた。



「はい、これ。どうぞ」

 先に珈琲を買った夏樹が空に差し出した。

 空は「いらない」と首を振った。

「いいから、持って行って。飲まなくていいから」


 ちょっと強引だが、夏樹は空に珈琲を渡した。

 だがその時、空の右手に深い傷跡があるのを目にした夏樹は、胸が張り裂けそうなくらい痛んだのを感じた。


 空は黙ったまま、珈琲を受け取りその場を去って行った。




 夏樹は胸の痛みが何なのかずっと気になっていた。







 それから数日後。

 駅前を通りかかった夏樹は、空と営業部長の佐久間力也(さくま・りきや)が腕を組みながら歩いているのを目撃した。

 まるで恋人のように歩いている2人を見て、不信に感じた夏樹は後を追った。



 力也と空はホテル街へ消えて行った。


「佐久間部長。結婚しているのに…まさか、あの噂は本当だったのか? 」


 夏樹は力也が、女子社員と不倫している噂を何度も耳にしていた。

 今まで複数の女子社員が、突然退職したり、事故で退職したり大怪我したり、会社に居られなくなり退職した女子社員もいる。

 しかし力也に繋がる証拠がなく、事実が明るみになっていなかった。


 
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