夏樹と空の恋物語

 しばらくして。


 夏樹の母・樹利亜が買い物をしてきてくれた。


 夏樹に似た感じの顔立ちで、とても穏やかな目をしている樹利亜。

 もう65歳になるが、まだ40代くらいの若々しい女性に見える。

 柔らかい茶色い髪をショートにして、シックな紺色のワンピース姿はとても上品に見える。



「これで良かった? 」

「うん、助かったよ。有難う」

「それで、彼女は大丈夫? 」

「今眠っているよ。ちょっと熱が高いんだ」

「そう、汗かいていない? 」

「ちょっと見て来る、しばらく寝てたから」




 寝室に向かった夏樹は空の様子を見てみた。


 首元に汗がにじんでいる空。


「あ、汗かいている。着替えなくちゃ」



 ちょっとあたふたしている夏樹は、空の着替えを探した。


 隣の部屋のタンスの中に、パジャマの着替えがあった。



「夏樹? どうしたの? 着替えるの? 」

 樹利亜が声をかけてきた。


「うん。母さんが言う通り、汗かいていたから」

「じゃあ、私がやるわ」

「え? 」

「こうゆうのは、女の役目。夏樹の大切な人は、お母さんにとっても大切な人よ。任せて」


 夏樹が手にしていたパジャマを受け取り、樹利亜は寝室へ向かった。





 眠っている空の着替えを樹利亜がしてくれた。

 その間に夏樹は、空にお粥を作った。

 夏樹も高熱を出したとき、よく、樹利亜がお粥を作ってくれた。

 シンプルな卵味のおかゆを食べると元気だが出た。


 樹利亜が作ってくれた味を思い出しながら、夏樹はお粥を作ってみた。





 お粥が出来上がる頃、樹利亜が着替えが終わり寝室から出て来た。


 
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