鬼の目にも慕情
「小澤さん、出会いが欲しいんですか?」
「そ、そうっす。あればいいなーって…。
だから、柿原隊長はどうやって八城さんと出会ったのか気になって」
なるほど。と一言言った後、きっかけは…、とちょっと思い出す八城さん。この顎に手を当てて考える感じ、なんとなく柿原隊長を彷彿とさせるな。同じ仕草でも、こんなに柔らかく表現できるんだな。
「たしか、ある時から頻繁にうちのお店に来るようになったんですよ。いっつもケーキとかパフェとか甘いものばっかり頼むから気になっちゃって。甘いものを好んで食べるような人には見えないじゃないですか。それで、私から話しかけたのがきっかけだったんじゃないかな」
まさかのファーストアクションは八城さんから。
え…、羨ましい。
そこから奇跡は始まってたのかよ。
「あー、思い出した。
あの頃の柿原大変だったんだよ。寮にもあんまり帰ってこないくらい仕事に入れ込んでて、その結果低血糖で倒れたってのに、大したことないって言って仕事続けて。病院に行けって言っても言うこと聞かないから、働き続ける代わりに、俺の行ってる喫茶店に行って甘いもの食べるようにしろって約束したの。かなり渋々て感じで言ってたから、そこで結婚相手見つけたって知った時には信じられなかったんだよな」