鬼の目にも慕情
「そういえば、翔太さんの願いって何だったの?ずっと気になってたんだよね」
「え?なんのこと?」
「なんのことって、願いが叶うからってこのサボテン育ててたんじゃないの?」
「あー、そういえばそうだったっけ」
「もう、絶対教えてくれないんだから」
こうしてはぐらかすのも何度目だろう。
本当のことなんか、恥ずかしくて言えるかよ。
プロポーズの言葉でさえ顔から火が出る思いだったんだから。
「じゃあ、その願いは、叶ったの?」
「そうだな…。願った以上だ」
「え?なにそれ、すごいね」
無邪気にはしゃぐその姿にこっちまで嬉しくなる。この笑顔が見たくて、コツコツ霧吹きを吹きかけてきたんだよな。
由乃と一緒にいられたら…。
このサボテン、かなりのご利益があるみたいだな。