鬼の目にも慕情

そういえば、どうして柿原隊長は彼が犯人だと気づいたんだろう。
たしかに、見た目は不審な感じあったけど、あの時点で証拠は何もなかったはず。あの男が柿原隊長の迫力に耐え切れずに勝手にボロを出したってだけだ。

それに、俺だって、会場に入ってきた彼を見ていたはずだ。だけど記憶にないってことは、特に気になる点はなかったってことだ。
柿原隊長は、いったいどこを見てたんだろう。

帰りの車に揺られながら、そんなことを聞いてみた。お前、訓練生時代に何を勉強してきたんだっていう罵りがワンクッション挟まれる覚悟はもちろん持って。
だけど柿原隊長は案外すんなりと教えてくれた。

「今回の参加者の年齢層にしては、明らかに若かったろ。だから最初に目を付けた。
そこ以外は…、まぁ、勘だな。これと言って言葉で表現できるような不審な点はなかったが、なんとなくの雰囲気だ。金髪だったし、怪しいだろ」
まとめたー！
最後、金髪だったからってところにまとめた！投げやりかよ。
やっぱり見た目で判断してたってことなのかよ！

わかった。わかったぞ。柿原隊長、さては観察の仕方を教えるのは得意じゃないな。
そういえば、柿原隊長には攻撃の仕方とか、護身術は実践して教えてもらってたけど、他の事については榊副隊長の指導だったもんな。
どんだけ感覚的な人間なんだよ。
こりゃ、丁寧に手取り足取り教えてもらうなんて無理そうだな。