鬼の目にも慕情
はぁー。なんだここ。
かなり古い建物だよな。
「ここ、俺の行きつけでな。休みの日はよく息抜きに来てるんだ」
「へぇ、昔ながらの…、カフェ、ですか?」
こういう場所、俺の人生の中で、一度も来たことがないな。チェーン店のカフェが定番だもんな。
古い木造の建物の中は、数人のお客さんが好きなようにここでの時間を過ごしている。流れてるこの音楽は何だろう。聞いてると昭和時代にタイムスリップしそうだな。
「カフェって言うか、喫茶店って感じだろ?」
そうか。これが喫茶店か。そう言われたらしっくりくる。
まさかうちの警備会社に、こんな店に来るような人がいるとは。
でも、この優しさ溢れる榊副隊長なら、こんな雰囲気の喫茶店がよく似合う。
俺とか、柿原隊長は似合わない。

「小澤は、コーヒー飲める?」
「はい」
「良かった。柿原は全然飲めないから連れて来られないんだ」
「そうなんですか?意外ですね」
苦いものが飲めないのか?
ブラックしか飲みません、みたいな顔してるのに。
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