鬼の目にも慕情

数日後。
痛い。体中が痛い。
筋肉に深い痛手を負いながら、必死に足を前へと出す。こんなにも大変だとは。今までは何とも思ったことのなかった寮からコンビニまでの距離が、果てしなく遠い。
あんなふうに自由に歩き回れていた頃が懐かしいよ。幸せだったな。

「うわー、ゾンビだ!」
ちびっこは思ったことをそのまま口にするんだな。君もそのうちわかるさ。大人の世界が、理不尽にまみれているってね。
今のうちに、鬼を退治する術を身に付けておくんだよ。
まぁ、そんな正義が通じる相手じゃないんだけどな!

そう。昨日は久しぶりに1日トレーニングだった。朝から晩まで、柿原隊長がつきっきりという、贅沢すぎて目眩がしそうなスケジュール。
俺たちに、地獄の研修期間を甦らせるのが目的なのか。
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