鬼の目にも慕情

受け取った袋を大事に抱え、寮へと戻る。信じられないくらい足取りが軽い。もうゾンビなんて言わせない。スキップだってできてしまう。
いやー、浮かれてんな、俺!
早く部屋に…。
「うっわ」

一気に現実に引き戻される。柿原隊長によって。
「なんだ、小澤か」
それはこっちのセリフですよ。
そんな廊下の曲がり角から出てこないでくださいよ。
こういうシチュエーションでなら、ぶつかるのは女性って決まってるんですよ。
「し、失礼しました」
あれ?寮に柿原隊長がいるなんて珍しいな。また新人いびりでもやってんのか?
だったら早く逃げないと。ほら、出会ってしまったせいでまた筋肉たちが騒ぎ出した。
一礼して、逃げようと…、立ち去ろうと背を向けたとき、その肩をがちりと掴まれた。
「いっ!」
なにしてくれてんだ、やんのかコノヤロー!
内なる小さな俺は盛大にファイティングポーズを向ける。
< 28 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop