鬼の目にも慕情

「その袋はなんだ」
袋…?
右手に白いコンビニのビニール袋。左手に抱えているのはさっき八城さんから預かったコーヒー豆。
「ちょっと甘いものが食べたくなったので、同期の分も一緒にデザートを」
「違う、そっちだ」
豆の方?
「えっと、近くの喫茶店で榊副隊長がコーヒー豆をよく買ってらっしゃるそうなので、お届けに」
「なんでお前が?」
「さっき、偶然八城さんと会ったので…」
「あ?」
な、なに?
ただコンビニに行って帰ってくるまでの事を話してるだけなのに、なんでこんなに追い込まれてるんだ?
極悪非道なことをしてるわけじゃないのに!
「八城さんって言うのは、その喫茶店の店員さんで、榊副隊長のお知り合いです…。えっと、それで、俺が店の外で倒れてたら…」
「へぇ…、そうか。
行っていいぞ」
「はい…。失礼します」
ん…?今のは何だったんだ?
納得した感じだったけど、俺は何も納得できなかった。
柿原隊長のあんな反応は初めて見た。
ま、いいか。
早く渡して、部屋に戻ろうっと。
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