鬼の目にも慕情

夕食を食べながら、これからのことを話し合った。
「へー。小澤さんに私たちのこと話すんだ?」
「あぁ、そう思ってる」
断られるか?
職場の人間にはあまり言いたくないと言い出したのは俺の方。だから由乃も職場では俺のことを話さないようにしてくれている。結婚当初、2人で決めたルールだ。
それを、今になって例外を作ろうとするなんて、呆れられても仕方ない。

「ねぇねぇ、私たちのこと、翔太さんの職場の人に打ち明けるのって初めてだよね?榊さんは、最初から知ってたし、他の人に気づかれることもなかったもんね」
あれ、なんだか嬉しそう…?
「話してもいいの?」
「もちろんだよ。
今度会った時に紹介してくれるの?私、何て言ったらいいのかな。主人がいつもお世話になっております、とか?」
「待って待って。小澤には、報告をするだけだ」
「でも、お店で会うでしょ?」
「あいつ、そんな頻繁に来てるのか?」
「先週も来てくれたよ」
「先週も!?」
おいおい、通い詰めてるじゃねーか。
榊だけでも面倒だってのに、あいつまで。
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