鬼の目にも慕情

「おぉ、どうしたんだよ。小澤が俺より早く起きるって珍しいから何事かと思った。嵐でも呼ぶ気?」
階段を降りていたら、ちょうど同室の天海勇哉が上がってきていた。
「俺だって早起きくらいするって。
トレーニングルームに柿原隊長が来たから逃げてきた」
「そういえば、最近柿原隊長からよく呼び出されてるよな。
また何かやらかした?」
「そう思うよな?
だけど、何も、ないんだよ。呼び出されたのに、今までみたいなパワハラも、高圧的な態度も…。
そりゃ、仕事でヘマしたら怒鳴られるんだけど。おかしいと思わない?」
あんな柿原隊長、見たことないんだよな。

「お前が柿原隊長からのパワハラを待ってるってのは意外だったが…」
「待ってるわけないだろ!
って、そうじゃなくて。もー、俺には柿原隊長が何考えてんのかさっぱりわかんねーよ」
「新手の嫌がらせでも始めたのか?」
何を真剣な顔して考えてんだか。もしそうだとしたら、悪趣味にもほどがある。
なんだよ、呼び出しておいて何もないって。それなら堂々と叱られた方がまだマシだ。
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