鬼の目にも慕情
立ち上がり、ゆっくりこちらに向かってくる。
なんで無表情なんだよ。
もうパニックなんだけど。

俺の感情なんか置いてけぼりで、勢いよく足を振り上げた。そのまま綺麗な蹴りを入れてきた。
いった…くない?
強く瞑った目を開けると、俺のすぐ横の壁を足の裏で蹴っていた。
すげぇ迫力。
なにこれ。
壁ドン?新手のドキドキシチュエーション?
「天海以外には気づかれてないだろうな?
あいつは賢いからべらべら口外することもないだろう」

なんで天海をすんなり信用してんだよ!
俺のことはめちゃくちゃ怪しんでるのに。
俺はあなたの相棒ですよ?
付き合いだって俺らの方が濃いはずでしょ?

「このことを他の奴らに喋ったらわかってんだろうな?
それから、八城由乃には俺の仕事内容は話すな。彼女には俺は警備員としてショッピングセンターに勤務してるって話してある。お前もその話に乗れ。そのために俺の秘密を共有することにしたんだ。
いいな?」

はいはい。どうせ俺に拒否権なんかないくせに。
わかりましたよ。どんなに理不尽なことも乗り越える。それが新人訓練で教わったこと。
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