鬼の目にも慕情
リビングには広げられたスーツケース。
さっきまであちこちに服やらお土産やらが散らばっていたというのに、あっという間に詰められていく。
はぁ。由乃は俺を気にとめることなく着々と荷造りを進めていくのな。
俺もついて行こうかな。
見てたドラマも全然頭に入ってこない。
「あ、小分けの袋があったほうがいいな。どっかなかったかな。
翔太さん。どこかに服をまとめられる袋なかったっけ?
いろいろ詰め込んでたら荷物増えちゃって」
「あぁ、それなら俺のスーツケースの中にしまってある…けど、そんなにたくさん持って行ってどうすんの?」
「何があるかわかんないからね。
ありがとう。取ってくる」
行くのは地元の同窓会だろ?
何があるっていうんだよ!

“誰にも知られないんだし、たまには息抜きも必要だろ”
“でも、帰らないと。主人が待ってるから”
“久しぶりに会えたのに、もう帰っちゃうの?”
“…”
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