鬼の目にも慕情
「今日からは訓練生ではなく、いち警護人として接する。一瞬たりとも気を緩めるなよ。いいな!」
「よろしくお願いします!」
あー…、胃がきりきりする。穴が開きそうだ。絶対無理。この人と一緒に仕事なんて、怒鳴られただけで一日終わりそうじゃん。

俺の知ってる柿原隊長は、ただひたすらに鬼のような男。
血も涙もない。
とにかく厳しくて、訓練生時代には何度怒鳴られたか数えきれない。 
何度殴って逃げてやろうかと思ったかも数え切れない。

訓練中だって、まともに予定通りに終わったことなどない。
腕立てをすれば肘が曲がってないとやり直し。
走り込みをすれば、気合が足りないと終了間際で10周追加。
実技ではボコボコにやられる始末。
何ひとつ良い印象がない。理不尽なことばっかり。

身辺警護課といえば、議員やらどこかの社長やらの警護については、怪しい人物を確実に取り押さえ、依頼主の安全を守るのが仕事。
いつでも危険がつきまとうこの仕事で、柿原隊長は難しい案件をいくつもこなしてきたという。
その功績は素晴らしいけど、俺たちに対する冷徹さは血が通ってるのかと疑うほど。
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