鬼の目にも慕情
「おい、柿原!
捕まえたいなら警察を待て!」
向こうからはガサガサと雑音しか聞こえなくなった。
はぁ、無視か。
もう無線の声すら聞こえてないんだろうな。
こうなった柿原は誰にも止められない。
暴君の誕生だ。

言っても聞かないのはわかってる。そもそも、これくらいの制止で柿原が止まるなら、誰も苦労してない。あいつの無茶はこれまでに何度も経験してきてる。

ふぅ。
一旦椅子に深く座って気持ちを落ち着ける。
俺がいるのはこの事務所。何を言ったところで柿原を止めることは不可能。だったら現場の処理は小澤に一任するとしよう。
「小澤。柿原の回収頼んだぞ」
“帰ってくるのを待ってればいいんですかね…”
こっちはこっちで、一応警察を呼んで、現場の情報を渡しておくか。
< 76 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop