鬼の目にも慕情

「榊。お前も余計なことをべらべら喋るな」
ふぅ。榊副隊長に矛先が向いたお陰で、ようやく柿原隊長と距離をとれる。
「奥さんが家にいないからのびのびできるって言ってる先輩たちもいる中で、鬼の柿原隊長がこれってどうなのさ」
「うるせーよ」
いじられて、タジタジな柿原隊長。
珍しい。
やっぱ八城さんのこととなると弱いんだな。
鬼は完全に消え去ってる。

ん?何か音が鳴った。
そう思っていると、すごい速さでポケットから携帯を取り出す柿原隊長。
「じゃ、俺はそろそろ帰るから」
それだけ言い残して帰って行った。
なんだ、その速さ。ひとつひとつの動作が、コンマ何秒の世界だった。

「八城さんから返事が来たんだろうね。わかりやすいな、あいつも」
「そういうことですか」
わかりやすい。いつもの柿原隊長からしたら、ありえないデレ方。
俺らにもそれくらい優しくしてくれたらいいのに。
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