コーヒーのお味はいかが?
「ねぇ、知ってる?始まりも終わりも、プラマイゼロなんだって」

「何それ」

「大半の人間が生まれた時に喜ばれ、亡くなる時に悲しまれる。もし仮にそうじゃなかった人がいたとしても、人生をグラフに表したら喜びも悲しみも、みんなが平等になるように神様が振り分けてるんだって」


前に受け持った患者さんが、そんなことを言っていた。


「その原理はきっと恋愛も同じで、幸せな恋をしたら悲しい恋もする。仮に結婚しない人生を選んだとしても、たぶん他の人と同じ分だけの幸せを受け取れるんだよ」

「医者だし、この性格だから神様とか信じないよ、あたし」

「知ってる。どっちかって言うと、あたしも神様なんて信じない。でも答え合わせなんて誰もできないから、嘘だとも証明できない」


良いことも悪いことも、大きい出来事が小さい出来事を飲み込む。

そして記憶と言う名の箱に、押し込められる。

< 113 / 130 >

この作品をシェア

pagetop