狐に恋した男の子
「じゃあ、天ぷらをもらおうかな……」

ギユウは山菜の天ぷらを口に入れた。そして、「おいしい」と呟く。

「人は、こんなにおいしいものを毎日食べるんだね」

「ギユウも僕と一緒でしょ?どうして、村で暮らさないの?」

リュウハが訊ねると、ギユウは切なげに笑う。その横顔に現れた感情を、まだリュウハは読み取ることはできない。

「私は狐だからね。ほら、人にはこんな耳や尻尾はないでしょ?」

「うん。でも、ギユウは僕と話してるよ。狐を山で見たことがあるけど話さなかったし、人じゃなかった」

「私は特別な力を神様からもらったんだ。だから、こんな風にリュウハと話せるんだよ」

「でも、毎日話したいな。ギユウには会えない日もあるから……」

いつか、遠くに行っちゃうの?とリュウハは訊ねる。ギユウがいなくなるということは、リュウハにとって辛いことだ。ギユウはリュウハの姉のような存在でもあり、親友でもあり、好きな人でもあるのだから。
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