氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「同点、だったんでしょ」

 勝ってから言いなよ。

「ゴール数は同じだった」

 "だけど"――と、アイツは低い声で続ける。

「アシストで俺の方が上回ってた」

 ――――!

「どこ見てたんだよお前」
「どこって……」

 わたしの顔半分をすっぽり覆っている手をどかし見上げると、伏せ目がちなアイツは、ちょっぴり拗ねてるようにも見える。

「当麻氷河を見てたよ」

 悔しいくらい。

「あんたばかり見てた」

 氷上でのあんたは、地上にいるときよりもずっと自由で。

 ダイナミックでありながら優雅なスケーティングも。

 得点を入れたあと、少年みたいに笑ってガッツポーズしちゃうところも。

 仲間とグータッチしてるのも。

 リンクからあがると、応援にまわって、最後までアイスホッケーを楽しんでたのも。

「本当に好きなんだなって、伝わってきて。なんか。すごい元気もらっちゃった」
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