氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 そういや桜は恋バナが好きだったな。

「なんでもないよ」
「だれだれー?」

 いいからあんたは黙って爪でも磨いてろ。

「エリナちゃんカレシできたの!?」

 声がでかい……!!

「え、彼氏?」
「マジか」

 ああ、もう、めっちゃ周りから見られてるじゃん。

「纐纈依里奈と付き合えるって。さぞイケメンだろうな」
「大学生じゃね? 俺らは金持ってない時点でアウトだろ」

 なんだよその基準。

「もしかして――当麻くん?」

 ド天然娘、桜の問いかけに周りが静まり返る。

 苦笑いする沙里。

 おそるおそる当麻氷河の席に視線をうつすと、まだ学校には来ていないようだった。

「なんでわたしが。当麻氷河を意識しなきやならないの」

 ――アイツのせいだ

「ただのクラスメイトなのに」

 アイツが派手な爪を好まないっていうから、金曜日の夜には落としたんだ。
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