氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「待って!」

 歩くのはやすぎ。

 追いかけても追いかけても、距離が開いていく。

 登校ラッシュで生徒が多い。

 みんなより頭ひとつぶん背の高いアイツを見つけるのは難しくないけれど、わたしが埋もれてしまいそうだ。

「……っ、ごめんなさ――」

 階段付近で誰かにぶつかって。

「あー。エリナちゃん」

 そのまま、抱き寄せられた。

「おはよう。朝から俺を出迎えてくれたの? 嬉しいねえ」

 出たな、サイコパス。

「なわけないでしょ」
「どこいくのー? 君は一年生だから、あっちだよ」
「離せ、ヘンタイ……!」

 やば。

 アイツを見失ってしまった。

「氷河はよくて。俺はダメ?」

 ――っ!?

「み、見てたの?」

 金曜日の、放課後。

「え、なに。氷河に抱き締められでもした?」
「え……」
「驚いた。ほんとに? いつ?」
「い、急いでるの。離して」
「もしかして用があるのは氷河かい」
「……だったら?」
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