氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 当麻氷河が、わたしを好き――?

「ほんとに?」

 どういう"すき"?

「お前。嫌いなやつとキスできんの?」
「……っ、そんなわけないでしょ! あんたとが初めてなの……に」

 ――――!!

「あ……いや」

 経験が乏しいこと、自白してしまった。

 もうやだ。

「い、急がなきゃ遅刻つけられるかも」

 鞄置いてきたからセーフだと思うけど。

「俺が初めて?」

 当麻氷河が、足を止める。

「悪い?」

 井上をからかってたのに、実はファーストキスもまだとか。

 笑っちゃう?

 ……いや、黙んな。

 なにか言え。

「っていうか。なんで教室から飛び出してったの?」
「日直だったこと忘れて。職員室行ってた」
「……え」

 チャイムが校舎に鳴り響く。

「そ、そうだったんだ」

 みんなの話聞いて、怒ったとかじゃなかったんだ。

 日誌取りに行ってたんだ。

 …………で。

 はやく教室、戻らなきゃいけないのに。

 なんで歩き始めないの?

 アイツに合わせて立ち止まってる、わたしもわたしだけど。
< 136 / 617 >

この作品をシェア

pagetop