氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 消えそうな声、だった。

 それだけわたしはショックを受けているらしい。

「付き合う気ないのに……キスしたの? 都合のいいオンナってことだ?」
「ちがう」
「アイスホッケーが恋人のあんたも。それなりに欲求があるんだね」
「そんなこと言ってない」

 コイツは、わたしが思っていたのとは違う、薄っぺらい関係を希望している。

 譲る気ないってのは欲しいオモチャに対するような気持ち?

 それじゃあ、わたしの“すき”との重みが違いすぎる――

「話を聞け」
「やだ」

 教室に走って行こうとして、腕をつかまれる。

「依里奈」

 呼ぶな、クズ!

「部内恋愛禁止」
 
 ――ブナイレンアイキンシ

「うちの部は。選手とマネージャーの色恋沙汰は御法度なんだと」
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