氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 否定も肯定もしない当麻氷河が、あっという間にプリントを埋めていく。

「朝やればよかったんじゃない?」
「英語の課題してた」

 英語……って。一限だったよね。

 ギリギリで生きすぎてない?

 わたしが言うのもなんだけど、どうせ自分でやるなら――間に合わせたいなら余裕もってやればいいのに。

「紙ヒコーキ。けっこう飛ぶようになったよ」

 それか潔く諦めるか。

「動画サイトとか見てイロイロ折ってみたんだけど」

 沙里は、顔がいいって言ってたな。

 コイツのこと。

 よく見れば整った顔立ちしてるかも。

 正面より横顔の方がそれが際立つ。

 スッと高い鼻に、薄い唇、とがった顎。

 素材はいいのに少しも飾り気がない。

 制服の一番上まで留めてるボタンがダサい。

 ピアスの穴は一生あけなさそう。

 ……キスしたことなさそう。

 こんなヤツでも女に興味あるのかな。

 実は彼女欲しいとか考えてるのかな。
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