氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「今度遊ぼうよ。友達も一緒に」

 沙里の笑顔が引きつっているのが、わかった。

 なんとかしなきゃ。

 わたしが。

「紙ヒコーキ」
「は?」
「40秒飛ばせたら。考えてあげる」

 面倒くさい子だと思わせられたら。

 断るより向こうから逃げていくように持っていけたら、ラクだ。

「か……カミヒコーキ?」

 思った通り。
 男がうろたえる。

「飛ばせないの?」

 まあ、無理だよね。

 とっとと失せろ。

「飛ばせる飛ばせる!」

 ――――!

「だからどっか行こー?」

 適当すぎだろうが。

「エリナ、次降りよ」

 と沙里が耳打ちしてくる。

 たしか、次はまだ目的地ではなかったはず。

 逃げようってことだ。
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