氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 それがいいかも。

 これ以上コイツの相手するの嫌だし。

 沙里の降りる駅や、バイト先がバレでもすればそれこそ厄介だ。

「どこ行くの」

 ドア付近に移動しようとするわたしの腕を、男が掴む。

「そろそろ降りるので」
「奇遇だね。俺も」

 ……マジ?

 沙里と目を合わせる。

 きっと、思うことは同じ。

 消えてくれバカヤンキー。

「その子。俺のツレって知ってて口説いてるのか?」

 急に、頭の上から声が聞こえて

「いっ……五十嵐(いがらし)さん」

 ヤンキーが、一歩あとずさる。

「え、まさか。五十嵐さんの……女?」
「お前に関係あんの」
「な、ないです! いやあ。まぶいっすね! さすが……し、失礼します!」
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