氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「意外と色んな形があってね。わたしはできなかったけど、うまくいけば30秒飛ばせるのとか」

 初恋、経験済みなのかな。

「部品を付け足すこともできるんだって」

 現在進行形で密かに片想いしてるとか。

「でも、オーソドックスなのが個人的には飛ばしやすい」

 ーーって

 おい、当麻氷河。

「わたしの話、聞いてる?」
「ああ」

 聞いてるんかい。
 こっち見ずに片付けしてるけど。

「もう終わったの? すご!!」
「お前に邪魔されなければもっとはやく終わった」

 イヤミなやつ。
 間に合ったなら、いいじゃん。

「明日から課題はあんたに見せてもらおうかな」
「バカだろ、お前」
「はあ!?」

 そりゃあ、校内での成績は、下から数えた方がはやいのが多いけど。

 あんたよりはコミュ力あるよ、絶対。

「そんな話。わざわざしにきたのかよ」

 ーーあ。

「暇人にも程がある」

 そう言って、わたしが握っていたシャーペンを奪い返した地味男のーー微動だにしなさそうな表情筋が動いた。
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