氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 男らが隣の車両に逃げるように消えていく。

 顔を上げると、坊主に剃りこみの入った強面男子と目が合った。

 イガラシさん……怖ぇ。

 番長的な風格を感じる。

 でも、助けてくれたんだよね?

「……ありがとうございます」

 切れ長の一重。

 小さな顔。

 つり上がった眉。

 あれ?

 このひと、どこかで……

「32番!」
「おー。よく覚えてたな」

 間違いない。

 クロスアイスのとき――生まれて初めてアイスホッケーを見たとき、リンクの上にいた人だ。

 ヘルメットしてたから選手の顔はよく見えなかったけど、目元が印象的で。

 なにより、シュートをほぼブロックしてたのが凄いなあって思った。

 背番号、32番――【IGARASHI】さん。
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