氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 当麻氷河は、アイスホッケー中心の生活をしている。

 その中で勉強もバイトも頑張っている。

「イガラシさんは。とても初心者には見えませんが」
「小学生のときに始めて7年やってた」

 やっぱりベテランだ。

「なにがきっかけで始めたんですか?」
「親父が好きだった。それで。息子の俺にもやらせて」

 ――好きだった

「右も左もわからないうちに、スケート場に連れて行かれて。なんのために滑ってるかもわからなくて。でも、スケート靴を履いて、親父を追いかけるのは嫌いじゃなかった」
「親子でやってたんですね。練習」
「ああ。チームに入ってからは、唯一無二なポジションのゴーリーに惹かれた。親父にそれを言ったらガッカリされるどころか、応援してくれて。練習の送迎や弁当作り。デカくなるごとに買い換えてもらった、安くはない防具やユニフォームやスケート。傍で支え続けてくれた親には本当に感謝してる」

 あの動きができるのは、今も続けてるからだと思ってた。

 でも、そうじゃなかった。

 イガラシさんは、アイスホッケーから離れてしまっているんだ。

「この前のクロスアイスは久しぶりの試合だったんですか?」
「ああ。あの日は会ってみたいヤツもいたしな」

 気になる選手でも、いたのかな。

「まあ。またうちの高校の連中に絡まれたら俺の名前出すといい」
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