氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 白鳥店長は、男性だった。

 ハスキーボイスだなとは思ったけど、メイクしてるし、細いし。

「君を撮らせてくれないかな」

 ……え?

「店長ね。写真が好きで個展を開いてたりするの」

 つまり。
 モデルになれってこと?

「撮るって言っても。ヌードじゃないよ」

 当たり前だ、とツッコミを入れようとしたら先に沙里が白鳥オーナーの背中をバシッと叩いた。

「ポーズとか指定するわけじゃなくて、今この瞬間の君をレンズにおさめたいんだ」

 ――今この瞬間

「君には、ない? そんな衝動が」
「……わたしにも。あります。そういう瞬間は」

 思い浮かべたのは、氷上でキラキラしているアイツの姿だった。

「でも、写真は……ちょっと」
「エリナ、SNSにあげるのも嫌ってて」

 と、沙里。

「ふーん。珍しいね、そういう子。ダメ? 一枚だけでも」
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