氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「今日の写真、うちの店の宣伝に使わせてもらえないかな」
「いや……それは。勘弁してください」

 誰に見られるかわかんないよね。

「インスタにあげちゃダメ?」

 それ、世界中の人が見れちゃうやつ。

「もちろんお礼はさせてもらうよ。この店のドリンク一年分でどうだい」

 それはなかなか太っ腹で、そそられる。 

 夏は涼しく冬はあたたかいこのお店で、無料のミルクティーやココアを飲みながら勉強できるということだから。

 往復の交通費が浮くようなものだ。

 ……ガソリンスタンドも眺め放題。

「顔が出るのは避けたいです」

 それに、わたしの写真に一年分のドリンクつける価値あるのか疑問でしかない。

「最後の一枚なら、君の身近な人にしか気づかれないと思うんだ」
「最後?」
「特別いい雰囲気が出ていたね」
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