氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 なんでわたしが。

「えっ……ナリスマシってやつ?」
「ちがうよー。【奇跡のJK】ってバズってる」

 キセキ?

「こんな身近に話題の女の子がいるとは。ふふ」

 なんだか嫌な予感が、する。
 
「……エリナ」

 次に声をかけてきたのは、沙里だ。

 なんだか青白い顔をしている。

「ごめん」
「なにが」
「そうか。情弱なエリナは知らないんだね」

 謝りたいのかバカにしたいのかどっちなんだ。

「あの写真が」
「あの写真?」
「昨日、白鳥さんが撮った――」

 沙里が説明し終える前に、

「これこれ!」

 桜がニッコリ笑ってスマホの画面を見せてきた。

 そこには、

「これ……昨日の」

 わたしがタピオカを飲んでいる写真が。

 ご馳走になったのもあって撮影の許可出したやつ。

 顔が判別しにくいのは広告に使っていい、と言ったが。

 …………え!?

「どんどん【いいね】増えてるよ~?」

 もう載せたの?

 それが話題になってるの?

「バズるなんて。さすがエリナちゃん」

 バズる?

「増えてるって。どのくらい……」
「2万超えた」
「え?」
「すごくいいショットだよねー。でも。なんでカメラ目線じゃないの?」

 昨日の今日で、2万?

「……桜。それがわたしだってこと。誰かに?」
「塾の友だちと。同中の子とか家族と、あとフォロワーさんに自慢しちゃった。同クラで爪磨きもらったことあるって」
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