氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
◇
「あの子だよね、絶対」
「前から可愛いとは思ってたけど」
「この高校から芸能人誕生しちゃったりして」
写真に写っていた子がわたしだという噂は、その日のうちに校内に広まった。
登下校時や移動教室のとき。
はたまた体育の授業中などに他人からの視線を感じることはあったが、これまで以上だ。
「サインもらいたいなー」
ないよ。
「一緒に写真撮りたい」
断る。
桜に『わたしの名前とか言わないで』って釘をさしたところでおさまるレベルをはるかにこえている。
いずれは――ううん、既に他校の生徒の目にも入っていると思う。
「エリナ」
【あのこと】が周りに知られるのも
時間の問題……だろう。
「顔色悪いよ。保健室行く?」
――保健室
「ついてくから。行こう」