氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
『女子って色々面倒そうだな』

 筆箱を隠されて困っていたわたしに、筆記用具を貸してくれた人がいた。

『僕なら。顔色うかがって、無理に合わせて、言いたくもない悪口言ってまでつるむのは御免だ』

 ハッキリした性格の男子で

 裏表のない彼に、随分と救われた。

『じゃあ、わたし。×××と一緒にいる』
『物好きなやつ』
『いいでしょ?』
『好きにすれば』

 仲がいいわけではなかったが

 唯一、心を許せる相手だった彼が――

『期末テスト終わったら夏休みだね』
『そうだな』
『×××は。夏祭りとか行く?……もしよかったら、』
『纐纈』
『ん?』
『転校することになった』

 ……2年の夏、引っ越してしまった。
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