氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 彼がいなくなった学校は本当に退屈で

 一人ぼっちのわたしは男子から甘やかされ、女子からは目くじらを立てられた。

 影で悪口を言ってくるグループとつるむのは、やめた。

『お前らさぁ。纐纈さん可愛いからってイジメんなよ』

 強い立場にある男子を味方につけ、守ってもらうようになってからのわたしは怖いもの知らずだった。

『ブスの妬みってえぐいな』

 ノートを捨てられたときはコピーをとってくれたし、

『力になれることがあれば相談してくれ』

 先生だって優しかった。

 けれど、それも、この外見あってのことで。

 もしも昔のように太っていたら男子も冷たいんだろうなと思うと、人の優しさを素直に喜べなくて。

 わたしの中身が空っぽなのもまた変わらなくて。

『俺と付き合わない?』
『誰かのものになる気、ないんだよね』
『そういうとこも可愛い』

 言い寄ってくる人間に、わたしが心を開くことはなかった。
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