氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 ――っ!?

「ええ、氷河。意外に手がはやいんだね?」

 言わなくていいよ。

 バカ正直か。

「じゃあ俺もしていい?」

 その理屈はおかしいだろうが。

「待てよ。氷河にしたら、間接キスになるんだなあ」

 あんたの思考どうなってんの。

「ねえ、エリナちゃーん」
「無理」
「まだなにも言ってないのに」
「ヘンなこと頼むんでしょ」
「んーん」
「なに」

 成澤の口元が、わたしの耳元に近づいてくる。

「氷河と別れたあと。ラブボいこ?」
「……っ、半径2メートル以内に入んな」
「そう言われると逆に密着したくなるよね」
「それは俺が赦しません」

 ――当麻氷河に、抱き寄せられる。

「ちょ……」
「青春だねぇ」

 というか、しめられてる。

 うん。

 ギブアップしていいですか?

「ところでさー。こっから氷河の家、すごーく近いって知ってた?」
「……え」
「遊びにいけば?」

 このあたりだろうな、とか思ったりはしたけど。

 そんなに?

「今夜なら弟たちも練習でいないよね。呼んであげなよ~」
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