氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 成澤って、別荘持ってるんだ。

 それも部のみんなで泊まれる広さの。

「おかげで宿泊費は無料。往復の貸切バスも格安で提供される」

 すげーな。

 いよいよ何者なんだよ。

 どのくらいの時間をかけていくか知らないから断言はできないにしても、大荷物だから、出発地から目的地まで乗り換えなしで行けるバスでの移動は快適なのだろう。

 成澤のおかげでわたしも払えそう、合宿費。

 そして合宿中は朝も夜も

 当麻氷河の傍にいられるんだよね。

 ――って、氷河くん

 まぶた閉じてるし。

 今にも寝そう。

 ツン、と頬をつっついてみる。

「帰りたくなったら。起こして」

 えっと。

 それじゃあ、

 ……帰りたくならなかったら?

「ねえ」

 返事は、ない。

 もう半分夢の中だったりして。

「……放置」

 わたしがこんなに近くにいるのに。

「氷河くーん」

 寝るのはやいな。

「そんなこと言ったら。わたし。帰らないぞ」
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