氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 扉、閉めちゃったし。

「ポニーテール似合うよね」

 そんなこと言わなくていいから、はやく帰って夜に備えてご飯食べるなり休んでなよ。

「今朝は。髪を巻く時間を惜しんで日本史の暗記してて」

 人物名やら年代やら、ほんと覚えること多すぎ。

「真面目だなあ。エリナちゃんは」

 いやいや。
 真面目ならギリギリに焦らないって。

「フジオ先生にも約束したからさ」
「フジくんに? なにを?」
「勉強も頑張りますって」

 だから、悲惨な成績とるわけにもいかない。

「俺のおかげでそこそこ点とれたでしょ?」
「うん」
「それはよかった」

 沙里もバイトのない日は付き合ってくれた。

 今後ずっと誰かに頼るわけにもいかないし、2学期からは集中して授業受けていこう。

 部活に出るためだと思うと俄然やる気が出る。

「家庭教師とか向いてそう。意外に」

 頼りにならなさそうでなる男、成澤。

 こんな出会い方してなければ相手にすることはなかっただろう。

「バイトするほどお金に困ってないけど。まあ。女の子の部屋に2人きりってシチュエーションは悪くない」

 教え子の身が危険だ。

 なにをレクチャーされるかわかったもんじゃない。

「美人ママも狙ってみたり」

 倫理観ゼロか。
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