氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
#22 暇潰し
#22 暇潰し


 一回だけ……関係を?

「俺のものになれとは言わない。今だけのカンケイ」

 そんな滅茶苦茶な提案、もちろん――

「却下」

 受けられるわけないでしょ。

「自分から誘わないんじゃなかったの」
「そのつもりだったんだけどねえ」

 成澤が、耳元に顔を近づけてくる。

「つまみ食いしたくなった」
「わたしはプリンじゃない」
「俺にハマりそうで怖い?」
「まさか」
「だったら悪いハナシでもないと思うよ。後腐れないし」

 わたしにアイツを裏切れと?

 冗談じゃない。

「ドキドキしない? 2人だけの秘密が増えるって」

 あんたはそれで平気なの?

「前に言ってた話と。……ちがう」
「俺、どんなハナシしたっけ」
「一人を好きにならないっていうから。たくさんの【すき】があるのかと思ってた」

 平等に愛を与えているのだと、思った。

 でも。

 そうじゃなかった。

「成澤は、誰も好きになる気ないんだね」
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