氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「そんなことない。好きさ」

 本当に?

「やわらかいし。いい香りがするし」
「……っ、ちょっと」
「かわいく『ナリ先輩』って呼ばないと解放してあげない」

 成澤の唇が、わたしの首元に触れる。

「ふざけないで。成澤――」
「生意気な呼び方してくる後輩にはシツケが必要だねえ」

 触れてるだけじゃない。

 キス、されてる。

「本気で……怒るよ」

 だけど荒っぽくなんてなくて。

 むしろ優しく唇を這わせてくるのは、どうして?

「涙目になってる。かわいい」
「こんなの……」
「先に目をつけたのは俺なのにな」

 ……え?

「2年の教室まで『すごく可愛い新入生いる』って噂が広がってきたとき。すぐに君のことだとわかった」

 なんのハナシをしているの?
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