氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 ……あ。

「そういえば」

 わたし目掛けて飛んできたっけ。

「軟式テニスで使うボール。不意打ちにも関わらず、君はキャッチしてた」

 そんなこともあったな、と思い出す。

 コートの傍を通ったときのことだ。

「見てたの?」
「偶然、窓から見えたんだ。それが俺はなんだか可笑しくて」

 あのときは、ビックリした。

 フェンスをこえて飛んでくるなんて予想外だったし。


「たまたま取れたから良かったけど」

 受け止めなきゃ怪我してたかもしれない。

 やわらかいとはいえ。

「偶然じゃないでしょ」
「偶然だよ。運動神経ないし……」
「いいや、ちがうね。君にはハッキリと見えていたんだ。ちゃんと球を視界に捉えてたから反応できた」
< 258 / 617 >

この作品をシェア

pagetop