氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 聞かなきゃ知らないことだった。

 でも、聞いてしまった。

 それを忘れてなんて無理だ。

 どうして今そんなハナシをしたの。

「さーてと。夜練まで時間あるし。女の子のとこでも上がり込むとするか。どの子からの連絡に返事するか悩むなあ」

 携帯をポケットから取り出す成澤。

「わたし知ってる」
「なにを」

 画面を見つめながら返事される。

「成澤が、いい顔してるのは。女をはべらせてるときじゃなくて――アイスホッケーしてるときだって」

 粗末にしかできないなんて、嘘だ。

 少なくともアイスホッケーに対してはいい加減なことしてないよね?

「えー……。女の子といるときもハッピーだけど」
「氷上の成澤はキラキラしてる。だからわたしだってカッコいいと思うし。そんな成澤の誘いに乗っかる仲間が――」
「じゃあ氷上でキスしようか。ロマンチックだね」
「もういいよ。その気ないんでしょ」
「んー。なくはないよ?」
「キスは好きな子とするものだよ」
「君、ほんと第一印象と中身が違いすぎるよね。こんなに夢みる少女だったとは」
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