氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「アイスホッケー部の歴史は浅い」
「そうなの?」

 コンビニから戻った当麻氷河と裏庭のベンチにやってきた。

「7年前に同好会として創設され、去年ようやく部として動き始めた――にもかかわらず廃部の危機に直面している」

 まさかの事実におにぎりのビニールを破く手が止まる。

「え、なんで……なくなりかけてるの?」
「およそ半数いた3年が抜けて。今年新入部員が確保できていないためだ」
「今年は何人入ったの?」
「男子部員は俺のみ」

 そんなに少なかったんだ……!

「なんとか増やせないかな」
「4月ならともかく、今から新入部員を集めるのは難しい」

 高校から新しいスポーツを始めようってポテンシャルが高い人間――そこでアイスホッケーを選択してもらうのは簡単ではないだろう。

 この学校には、なにより学業を優先させている人も少なくない。

 だとしても。

 どこかに、いるかもしれない。

 これからアイスホッケーを始めようという人は。

「可能性、ゼロじゃないよね?」

 見つかるかもしれない。

「魅力的なスポーツだよって。胸はって勧誘したい」
「そうだな」
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