氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「スケートの経験は」
「まったくないっす」
「なら、今夜のうちに好きに移動できるくらいにはスケーティング極めとけ」

 鬼コーチなの?

「リンクにあがっていいんすか!?」

 そこ?

「あがらないと練習できないでしょ」

 思わずツッコミを入れてしまった。

「あ、いや。自分……てっきり見ているだけかと」

 ……?

「ラグビー部では、水くんできたりグラウンド整備したりが主な仕事でしたし」

 飲み物の準備まで真柴くんがやってたの?

 それってマネージャーか、選手個人で管理するものじゃ……。

「いいか。お前は個人練してろ」

 ――――!

「一時間の陸上練習だが、俺たちと同じメニューこなしてもらう。そのあと一時間半の氷上練習は一人で滑れ」
「ちょっと」

 アイツの腕を引いて、耳元で囁く。

「いきなり同じメニューは、酷な気がするよ。それに。初心者なら教えてあげた方がよくない?」
「どう動くか見たい」

 目が、本気だ。

「いくら部員不足でも。誰でも欲しいわけじゃないからな」
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