氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 そっか。

 だから今日はスケートの練習ひたすらしてろって言ったんだ。

 そこが基礎なんだ。

「素直そうなヤツだ。アイツ次第ではあるが、成長の見込みはある」
「真柴くんに期待してる?」
「本人が芽を伸ばそうとしているのに周りが潰してしまうのは勿体ないというだけの話だ」

 さんざん刺のあること言った当麻氷河がこんなこと考えてるなんて、真柴くんが知ったら驚くだろうな。

「たしかに体格は重要だ。デカい方が有利な場面は多々ある。しかし必ずしもチビだから活躍できないわけじゃない」

 今は初心者だから未熟なのは当然。

 いきなり飛躍することなんて求められていないんだ。

「続ける気があるなら。鍛えてやるよ」

 当麻氷河のスパルタ指導、飴と鞭の比率が1対9だったらどうしよう。

「おそいね、真柴くん」

 どこまで行ってるんだろう。

「本人が辞める気でいたとしても、ラグビー部の生徒を呼んで大丈夫なの?」
「問題ない。校則では原則的に兼部が認められている」

 掛け持ちオッケーってことか。

「ただし」
「……ただし?」
「部の規律で兼部を認めていないところはある」
「そうなんだ」
「文武両道を掲げているのは、うちだけじゃない」
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